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独占契約(エクスクルーシブ)は、ひとつの交換です。
企業は1社のエージェンシーにポジションの独占権を渡す。エージェンシーはそのサーチを、当たるかどうかわからない宝くじではなく、受注した仕事として扱う。
この交換が成立するのは、「お互いに何を負うのか」が契約書に書いてあるときだけです。
ところが実際は、どうでしょうか。共有ドライブから汎用の業務委託テンプレートを引っ張ってきて、フィーのパーセンテージだけ埋めて、残りは別の業界向けに書かれたひな形のまま。そんな契約書、見たことありませんか?
独占契約の契約書がカバーする範囲
中身はシンプルです。1社のエージェンシーに、独占権を、期間を区切って渡す。フィー、タイムライン、保証、出口条件を、候補者に声をかける前に書面で合意しておく。
成功報酬型(コンティンジェンシー)との違いは、構造にあります。成功報酬型では複数のエージェンシーが「先に出した者勝ち」で競争し、動いた工数の大半は報酬になりません。一方、独占契約の成約率は約80%。成功報酬型の約20%とは大きな差があります。
成約の見込みが高いからこそ、エージェンシーは独占案件をより低いフィーで引き受けられるわけです。
独占契約に必要な6つの条項
逆に言えば、次の6つのどれかを曖昧にしたまま署名すると、将来の揉めごとを自分で予約したことになります。
- 業務範囲
- フィー構造と支払い条件
- 独占期間
- リプレイスメント保証
- 秘密保持
- 契約解除と候補者の帰属
順番に見ていきましょう。
業務範囲
エージェンシーの仕事は、どこで終わるのでしょうか。
ソーシング、スクリーニング、候補者の推薦。ここまでは誰もが前提にしています。では、面接の日程調整は誰がやるのか。オファー交渉を仕切るのはどちらか。
「そんなの、エージェンシーに決まっている」と思うなら、そう契約書に書いてください。「人材紹介サービスを提供する」という一文だけでは、誰にも何の義務も発生しないんです。
フィー構造と支払い条件
いちばん議論になる条項です。
相場は初年度報酬の20〜30%。成功報酬型は30〜40%ですから、独占権と引き換えに割引が生まれる構造です。成約の確率が上がるぶん、エージェンシー側も価格を下げられるからです。
もうひとつ、見落としがちなポイントがあります。「報酬」の定義です。
基本給だけなのか、賞与や株式報酬を含むのか。オファー時と入社時でパッケージが変わったら、フィーはどちらの数字に連動するのか。ここを決めていない契約書は少なくありません。
支払いは、候補者の入社から30日以内が一般的です。それまでは1円も動きません。着手金がないこと。これが独占契約とリテイナー型を分ける境界線です。
独占期間
独占権の期間は、30日から90日が目安です。
短すぎるとエージェンシーは丁寧なサーチができません。長すぎると、企業側が閉じ込められたように感じ始めます。
期間はポジションに合わせて決めましょう。ジュニアクラスの採用なら30日で足りることがほとんどです。シニアや専門性の高いサーチなら60〜90日。理由はシンプルで、優秀な候補者ほど現職があり、面接のテーブルにつくまでに何週間もの対話が必要だからです。
そして、期間は「動く窓」にしてください。
エージェンシーが有力候補者を継続的に推薦している間は自動延長。逆に、2週間音沙汰がない、あるいは合意したマイルストーンを外した場合は、企業側が早期に離脱できる。この2つのトリガーを初日から契約書に入れておけば、死んだ案件を揉めずに終わらせられます。
リプレイスメント保証
紹介した候補者が、入社6週間で退職届を出したら?
標準的な保証は入社後30〜90日をカバーし、対応は次の3つのいずれかです。
- 無償での再サーチ
- 在籍期間に応じた按分返金
- 次回サーチへのクレジット充当
ここで重要なのは、対応の中身と同じくらい「発動条件」です。自己都合退職だけが対象なのか。会社都合の解雇は? 双方合意の退職は? どのケースが保証の対象になるのか、実際に起きる前に決めておくのです。
秘密保持
契約期間中、双方は「漏れたら困る情報」を扱います。給与レンジ、候補者の氏名、その採用の裏にある事業計画。
何が秘密情報にあたるのか。守秘義務はいつまで続くのか。法的に開示が求められた場合の例外はどうするか。この3点を明記してください。あわせて、エージェンシーがこの案件を実績としてマーケティングに使ってよいかどうかも決めておきましょう。
契約解除と候補者の帰属
契約はどちらからでも解除できます。条項の役割は、解除の「値段」を決めることです。
通知期間、選考中の候補者に対するフィーの扱い、そして契約終了後、エージェンシーが紹介した候補者への請求権がいつまで残るのか。
実は、いちばん揉めるのはこの最後の帰属期間です。契約が終わって数ヶ月後、企業がエージェンシー紹介の候補者を採用した。フィーは発生するのか? 答えは、帰属条項に何と書いてあるかがすべてです。
交渉すべき順番
条項は6つ。でも、交渉に使える体力には限りがありますよね。
多くの人はその体力をフィーに注ぎ込みます。そして、多くの場合それは間違いなんです。フィーを2%削って得をするのは、その1回だけ。一方、弱いリプレイスメント保証を受け入れてしまうと、3ヶ月で辞める採用ミスが起きたとき、フィーとやり直しのサーチの両方を失います。
経験豊富な交渉者は、この順番で進めます。
- リプレイスメント保証:取れる限り長い保証期間を
- 帰属期間:公平さを保てる範囲で、できるだけ短く
- 独占期間:ポジションの難易度に合わせて
- フィーのパーセンテージ:最後に。最初ではなく
フィーは一度きりのコストです。契約の構造は、その後のすべての成約を支配します。構造さえ正しく組めば、パーセンテージは自然と落ち着くところに落ち着きます。
エージェンシー側からドラフトが送られてきたときは、同じリストを逆順にチェックしてください。相手の紙面を検証するときの観点は、契約前に確認すべき質問リストにまとまっています。
契約書を作成する
ここまでの6条項は、突き詰めればいくつかの選択の集合です。ビルダーは業務範囲から候補者の帰属まで、その選択を順番にたどり、結果をドラフトとして出力します。
出力されるのは作業用のドラフトであって、法的助言ではありません。署名の前に、必ず弁護士のレビューを受けてください。
テンプレートの使い方
採用担当の方:フィーと保証のセクションから始めて、次に契約解除へ。エージェンシーが押し返してくるのはこの3つですから、話し合いの前に自社のポジションを固めておきましょう。
リクルートメントコンサルタントの方:独占期間とフィー水準は、ポジションの難易度とクライアントとの取引実績で決めてください。初回の契約と5回目の契約では、提示できる条件が違って当然です。
署名する前に
契約書が固定できるのは、双方がすでに合意した内容だけです。だから、合意づくりが先に来ます。
RFP(提案依頼書)を使えば、すべてのエージェンシーに同じ構造化された質問へ答えてもらえます。契約書は、その回答の上に載せる。そうすれば、あとから「言った・言わない」にならない約束が手に入ります。
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