リテイナー型を売りたいファームに成功報酬型について聞くと、返ってくる答えはいつも同じです。「あのモデルは壊れている」と。
でも、その結論で得をするのは誰でしょうか。
成功報酬型は、特定の範囲のポジションに対しては、設計どおりに機能します。問題は、その範囲の外で使ったときです。エージェンシーがほとんど動いていない案件に、初年度年収の35%を払うことになりかねません。
成功報酬型採用とは
成功報酬型採用とは、複数のエージェンシーが同じポジションを同時に担当し、採用が決まったエージェンシーにのみフィーを支払うモデルです。 前払いはゼロ。特定の1社への縛りもありません。
日本では、成功報酬型のフィーは初年度年収の30〜40%が相場です。支払いは候補者の入社時に全額。
年収1,000万円のポジションで35%なら、入社日を迎えた後に350万円の請求書が届きます。それまでは、一切支払いなし。
「ノーリスク」の本当のコスト
前払いゼロは、リスクゼロに感じますよね。
ただ、コストは見えにくいところに現れます。エージェンシーの「本気度」です。
あなたの案件を担当するエージェンシーは、同じ案件を3〜4社の競合も持っていることを知っています。社内で決まる案件や、知らされずにクローズされる案件も含めると、1件からフィーを得られる確率は約20%まで下がります。
合理的なエージェンシーはどう動くでしょうか。数十件の案件に時間を薄く分散させ、いくつか決まればいいと考えます。あなたの案件も、その長い列の中の1件です。
前払いのコミットメントを避けた分、あなたの案件にかかる労力が薄くなる。この交換が割に合うポジションもあります。多くのポジションでは、表に出ないまま失敗します。
成功報酬型が機能するケース
このモデルがフィーに見合うのは、エージェンシーの深い関与なしに埋まるポジションです。
具体的には、次の4つのケースが当てはまります。
- 大量採用:類似ポジションが5件以上あり、深さより幅が効くとき
- 人材が豊富な領域:汎用スキルで、要件を満たす候補者が多いとき
- エージェンシーのお試し:本格的に組む前に、新しいファームを試したいとき
- 急募案件:精度の高いショートリストより、速さが優先されるとき
この4つには共通点があります。候補者にすでにアクセスできることです。エージェンシーは求人サイト、自社データベース、応募者から候補者を集められます。ヘッドハンティングは不要。複数のエージェンシーを並行で走らせれば、このモデルの得意技である「候補者フローを素早く作る」が発揮されます。
逆に、転職潜在層へのアプローチや専門性の高いソーシングが必要なポジションは、この形から外れます。そこで成功報酬型を使えば、毎回期待を下回ります。
独占契約が成功報酬型に勝つケース
日本では、成功報酬型が本当にフィットするポジションの範囲は、多くの企業が思っているより狭いのです。ミドル〜シニアクラスの採用は、その範囲の外にあります。
エージェンシーが成功報酬型の案件を後回しにするのは、成約率20%の条件で3社と競争することが、時間の使い方として悪手だからです。では、1社に独占で任せたらどうなるでしょうか。
インセンティブが逆転します。
独占契約の仕組み
- 1社のエージェンシーがあなたのポジションを独占的に担当
- 支払いは採用決定時のみ(成功報酬のまま)
- フィーは20〜30%で、通常の成功報酬型より低い
- 独占期間は30〜90日
成功報酬型を壊すサイクルは、この条件下では始まりません。同じ候補者を提出してくる競合がいないからこそ、エージェンシーはあなたの案件に深く入り込めるのです。
なぜ独占契約のフィーは低くなるのか
ほぼ確実に決まる案件の低いフィーは、たぶん決まらない案件の高いフィーに勝ります。期待値で見ると、その差は明確です。
- 成功報酬型:年収1,000万円 × フィー35% × 成約率20% = 70万円
- 独占契約:年収1,000万円 × フィー25% × 成約率80% = 200万円
同じポジション、低いパーセンテージで、エージェンシーの期待収益は3倍以上。エージェンシーが独占案件を値引きするのは善意ではなく、この差があるからです。投じた1時間がフィーに変わる効率が、まるで違うのです。
あなたが手放すのは、複数チャネルの並行稼働と、途中でエージェンシーを乗り換える選択肢。1社の全力が必要なポジションなら、妥当な対価と言えるでしょう。
自社のポジションに合うモデルは
正解はポジション次第です。多くの場合、6つの質問で決まります。
診断結果がどちらでも、背景にあるロジックは同じです。アクセスしやすい候補者なら幅を、探し出す必要のある候補者ならコミットメントを。
よくある質問
成功報酬型はリテイナー型より優れていますか?
どちらか一方が常に勝つわけではありません。成功報酬型は前払いを避けられる代わりに、専任の集中を失います。リテイナー型はその集中を、採用の成否にかかわらず支払うフィーで買います。独占契約なら、集中のほとんどを得ながら、支払いは採用決定時のまま。ポジションに合わせてモデルを選ぶことが大切です。
日本での成功報酬型フィーの相場は?
初年度年収の30〜40%で、採用決定時に全額支払います。シンガポールや香港のほぼ2倍の水準です。各案件で競争が激しく、成約率が約20%にとどまるため、日本のエージェンシーはそれを織り込んで価格を設定しているからです。
成功報酬型の採用にはどれくらい時間がかかりますか?
幅があります。最初の履歴書は数日で届くこともありますが、決定率は低め。決まらないまま終わる案件も少なくありません。決まる場合は、キックオフから採用まで30〜60日が目安です。専門性の高いポジションは、さらに長くかかります。
シニアポジションに成功報酬型は使えますか?
使うこと自体は可能です。ただ、後回しにされることは覚悟してください。エージェンシーは成功報酬型の案件全体に労力を配分します。シニア採用に必要な継続的な集中は、その配分方式では生まれません。このクラスの採用では、独占契約のほうが目に見えて良い結果につながります。
成功報酬型採用は機能するのか:結論
大量採用、人材が豊富な領域、エージェンシーのお試しなら、成功報酬型は結果を出します。一方、日本のミドル〜シニア採用の多くでは、独占契約のほうが低いフィーでより深い集中を得られます。支払い条件は同じ成功報酬のまま。
標準的な成功報酬型で引っかかるのは、価格の付き方です。エージェンシーが本気で動いた案件でも、列に放置した案件でも、フィーは同じ35%なのです。
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