コンサルタント6人、オープン案件42件。東京の典型的な人材紹介エージェンシーのパイプラインです。
コンサルタントは全員、同じ3つの質問でこのリストを眺めています。どの案件なら本当に決められるか。どのクライアントなら早く動くか。自分の時間はどこで一番稼げるか。
あなたの案件も、そのリストのどこかにあります。もし下のほうにあるなら、コンサルタントが怒っているわけでも、忘れているわけでもありません。案件のスコアが低かった。それだけなんです。
コンサルタントがパイプラインを仕分ける方法
案件の順位を決める要素は3つです。
成約確率。 独占案件なら、その成約は「自分が落とさない限り自分のもの」です。一方、他の4社と競合する成功報酬型(コンティンジェンシー)案件では、勝率は約20%まで落ちます。ソーシングに20時間かけるとして、勝率20%と80%では、その20時間の重みがまったく違いますよね。
フィーの経済学。 年収1,000万円の案件で、フィー25%なら250万円。35%なら350万円。仕事の中身は同じなのに、後者は40%多く稼げます。時間は当然、条件の良いサーチに流れます。
充足可能性。 バイリンガル、35歳以下、経験10年、年収ダウンも受け入れる。こんな要件を読んだ瞬間、コンサルタントには「どれだけ探しても出てこない」と分かります。埋められない要件は、フィーがいくらであっても棚上げされます。
3つすべてでスコアの低い案件は、単純な計算の結果としてパイプラインの底に沈みます。
エージェンシーの優先順位を支える経済学
それぞれの要素には、はっきりした数字があります。
成約確率がすべてを動かす
1つの案件に5社が競合すれば、各社の勝率は約20%。独占なら、その1社の勝率は80%以上です。
複数社モデルの成績の悪さは、日本のデータも裏付けています。成功報酬型サーチの成約率は18.8%。成功報酬型の案件の80%以上は、最後まで埋まりません。
コンサルタントに50時間の余裕があれば、80%の賭けに使います。あなたでも、そうしますよね。
フィー率は努力を表すのか
日本の人材紹介フィーは初年度年収の30〜40%。米国(20〜25%)や英国(15〜20%)の平均を上回ります。逼迫した労働市場とバイリンガル人材の希少性が、このプレミアムを支えています。
この範囲の中で、フィーは「この採用をどれだけ重視しているか」をエージェンシーに伝えます。25%を提示すれば、「この案件を重視していないクライアント」と読まれ、時間は他の案件に回ります。標準レートを払えば、サーチは本気で扱われます。
値引き交渉は、請求書の上ではお金を節約します。でも、それ以外のすべての場所でコストを払うことになるんです。空席期間は延び、候補者リストは薄くなり、返信は遅くなります。
「埋められない案件」問題
そもそも要件に合う候補者が存在しないために、棚上げされる案件もあります。要件より1ランク低い給与。全部を同時に持っている人がいないマスト条件。ビジネス上の理由が見えない制限。
コンサルタントは最初の一読でこれを見抜きます。成功報酬型なら、案件を受けてもコストはゼロ。だから受けて、ファイルして、動きません。あなたは、最初から来るはずのなかった候補者を何ヶ月も待つことになります。
こうなったとき、先に壊れていたのはエージェンシーではなく、要件のほうです。
成功報酬型の悪循環
ここからフラストレーションのループが始まります。候補者が来ない。カバレッジを増やそうと、さらに2社に声をかける。各社は混み合った競合を見て、努力を引っ込める。候補者の流れはさらに細る。もう1社追加する。努力はまた減る。
これが成功報酬型の悪循環です。エージェンシーを1社増やすたびに、一番頑張っていた会社も含めて、全社の努力が下がります。
努力が減っても、フィーは減りません。5社がそれぞれ20%の注意しか払っていなくても、どこか1社が決めれば、30〜40%のフィーが満額で請求されます。このトレードを、自社の数字で確かめてみてください。
差は採用数に応じて膨らみます。平均年収1,000万円で年間10人採用する場合、契約モデル次第で、エージェンシーがあなたのサーチに投資する時間は400時間にも80時間にもなります。フィーはどちらでも同じです。
後回しにされないための方法
コンサルタントが採点しているインプットは、すべてあなたが設定しているものです。3つ変えれば、同じエージェンシーの動きが変わります。
競争を減らす
依頼するエージェンシーを絞れば、残った各社の勝率は跳ね上がります。独占で動く1〜2社は、成功報酬型で競い合う5社を上回ります。勝てると見込めるサーチになら、本気のソーシング時間を正当化できるからです。
そのショートリストを作るためにエージェンシーを比較するときは、データベースの大きさより、独占案件での充足率を重視してください。
要件を見直す
エージェンシーを監査する前に、要件を監査しましょう。
- 求めている内容に対して、給与は見合っていますか?
- マスト条件のうち、「強い候補者でも本当に落とす」ものはどれですか?
- 条件をすべて合わせたプロフィールは、日本に実在する人を描いていますか?
要件が埋められないとき、エージェンシーが自分から教えてくれることはほとんどありません。受けて、そのまま連絡が途切れるだけです。だから、こちらから聞いてください。「この要件のままで埋められますか?何を変えれば楽になりますか?」
3社が同じ案件で止まっているなら、パターンは案件のほうにあります。
フィー戦略を考え直す
エージェンシーフィーの交渉は可能ですし、交渉すべき場面もあります。ただ、その値引きが何を買っているかも織り込んでください。同じパイプラインに、より条件の良いサーチを抱えたコンサルタント。そして、あなたの案件が順番を待つ間に延びていく、数週間の空席期間です。
空席そのものが高くつくポジションなら、標準フィーを払い、代わりに独占のコミットメントを求めてください。大量採用であれば、低いフィーは「努力と節約の意図的なトレード」として合理的な選択になり得ます。
より良いモデル:独占サーチ
ここまでの対策はすべて、コミットメントを少数に集中させる方法です。その最も強い形が、完全な独占サーチです。
ただ、従来の独占契約には難点があります。各社がどんなサーチをするのか見る前に、1社を選ばなければならないこと。目隠しのままコミットするのはリスクに感じますし、そのリスクこそ、多くの企業が成功報酬型に戻ってしまう理由です。
新しい仕組みは、この「目隠し」の部分を取り除きます。AirTAは、エージェンシーがあなたの求人に提案を提出し、1社を選んだ時点からすべてのサーチが独占で動くマーケットプレイスです。仕組みが何であれ、原則は同じ。勝てると確信したコンサルタントは、投資します。
今週できる3つの変化
1. 案件ごとのエージェンシー数を数える。 3社以上なら、すでに悪循環の中です。類似案件で実績のある1〜2社に統合してください。
2. 「埋められますか?」と聞く。 その案件を担当しているすべてのエージェンシーに、「この要件のままで埋められますか?」と聞いてください。ためらいが答えです。もう1ヶ月失う前に、要件を直しましょう。
3. フィーと優先度を一致させる。 空席が痛いポジションには、標準レートと引き換えに独占を。値引きは、遅くて薄いサービスを本当に許容できるポジションに限ってください。
あなたの案件が後回しにされるのは、あなたのせいではなく、契約構造のせいです。複数社の成功報酬型では案件を無視する同じコンサルタントが、独占案件なら夜も週末も動きます。
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