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裁量労働制とは?みなし労働時間と残業代(2026年)

各社の採用ページに掲載された日本語の求人18,770件(774社)から、裁量労働制が適用されると書いた求人677件(51社)を数え、みなし労働時間と深夜・休日の割増賃金の書き方を集計しました。

Daniel Smith•2026年10月13日•更新日 2026年10月14日•16分

裁量労働制とは、仕事の進め方と時間配分を労働者に任せ、実際に働いた時間と関係なく、労使で決めた時間を働いたものとみなす制度です。対象は、専門業務型の20業務と、企画業務型の事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務に限られます。裁量労働制が適用されると書いた求人のうち、みなし労働時間を書いた181件(21社)では、1社ごとの中央値は8時間です(2026年10月時点)。21社のうち9社は、8時間を超える時間を書いています。

裁量労働制とは(決めた時間を働いたとみなす制度)

裁量労働制は、労働基準法38条の3(専門業務型)と38条の4(企画業務型)が定めるみなし労働時間制です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、専門業務型について「実際の労働時間と関係なく、労使協定で定めた時間労働したものとみなす」としています。企画業務型では、労使委員会の決議で定めた時間を働いたものとみなします。

みなし労働時間は1日についての時間です。同サイトは、1週間単位や1か月単位の時間を協定することはできないとしています。

早く帰った日も、遅くまで働いた日も、その日の労働時間はみなし労働時間として数えます。深夜と法定休日に働いた時間だけは、実際に働いた時間で割増賃金を計算します。

使用者は、業務の遂行の手段と時間配分の決定について、適用労働者に具体的な指示をしません(労働基準法38条の3第1項3号)。厚生労働省・都道府県労働局のリーフレットは、始業終業の時刻を指定し、それを対象労働者に厳格に適用した場合、裁量労働制が適用されないこととなり、実際の労働時間に応じた36協定や割増賃金が必要となるとしています。

労働基準法のみなし労働時間制には、事業場外みなし労働時間制もあります。

求人に書かれたみなし労働時間は企業の中央値で8時間

厚生労働省・都道府県労働局のリーフレット「裁量労働制の求人を行う際の留意点」は、事業主に向けて、労働条件として裁量労働制を明示するよう求めています。記載例は次の一つです。

裁量労働制(企画業務型/専門業務型)により、出退勤の時間は自由であり、○時間働いたものとみなされます。

裁量労働制が適用されると書いた求人677件(51社)のうち、みなし労働時間を書いた求人は181件(21社)です(2026年10月時点)。みなし労働時間は1社ごとの中央値で8時間です。

最も多いのは8時間で21社のうち7社、次が10時間で5社です。21社のうち9社は8時間を超える時間を書いています。企業ごとの値は6時間30分から10時間15分までです。

みなし労働時間企業数
8時間未満5社
8時間7社
8時間超〜9時間2社
9時間超7社

企業ごとに最も多く書かれた時間を1つ数えた値。みなし労働時間を書いた求人181件(21社)。2026年10月時点。

一部の求人は「所定労働時間を働いたものとみなす」と書き、時間の数字を書いていません。この書き方は上の181件に数えていません。

裁量労働制でも残業代が出る場合(8時間超・深夜・休日)

割増賃金(残業代)が必要なのは、三つの場合です。

  1. みなし労働時間のうち、法定労働時間の1日8時間(労働基準法32条2項)を超える部分。割増率は二割五分(割増賃金令)
  2. 深夜(午後10時から午前5時まで)に働いた時間。二割五分以上(労働基準法37条4項)
  3. 法定休日に働いた時間。三割五分(割増賃金令)

割増賃金令は、労働基準法37条1項の時間外と休日の割増率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号)です。

みなし労働時間のうち1日8時間を超える部分

厚生労働省の「専門業務型裁量労働制の解説」は、法定労働時間を超えてみなし労働時間を設定する場合には36協定を締結する必要があり、みなし労働時間のうち法定労働時間を超えている部分については割増賃金の支払いが必要になるとしています。

「確かめよう労働条件」は、次のように説明しています。

各事業場における「所定労働時間」や「所定労働時間に一定の時間を加えた時間」をみなし労働時間とすること等は可能ですが、その場合にも、適用労働者への特別の手当の支給や、適用労働者の基本給の引上げなどを行い、相応の処遇を確保することが必要です。

求人に書かれる「裁量労働手当」は、このような手当の名称の一つです。

深夜・休日に働いた時間は実際の時間で計算する

同じ解説は、労働基準法35条の休日労働と37条の深夜労働の規定は専門業務型で労働時間を算定する場合にも適用され、適用労働者が休日および深夜労働をした場合には、実際に働いたその時間に応じて割増賃金を支払わなければならないとしています。労働基準法34条の休憩や39条の年次有給休暇の規定も適用されます。

深夜・休日の割増賃金や手当について書いた求人は142件(10社)です(2026年10月時点)。書き方は四つに分かれます。件数では2社の求人が大半を占めるため、書き方は社数で示します。

書き方企業数
給与・年俸に含むと書く2社
別途支給と書く3社
一定時間分を固定で払い、超過分を別に払うと書く2社
手当の名前を挙げる3社

深夜・休日の割増賃金や手当について書いた求人142件(10社)。社数で数えた値。2026年10月時点。

求人の文言は、含む形では「…深夜労働40時間分の固定手当を含む」、別途支給の形では「休日労働および深夜労働に対する割増賃金は別途支給します。」のように書かれます。

対象業務は法令で限られ、適用には本人の同意が要る

厚生労働省・都道府県労働局のリーフレットは、法令で定められた業務で、かつ協定や決議で定めた業務にしか裁量労働制を適用することはできないとしています。

裁量労働制が適用されると書いた求人677件(51社)のうち、専門業務型と書いた求人は313件(26社)です(2026年10月時点)。

専門業務型裁量労働制(20業務・労使協定)

厚生労働省のパンフレットによると、専門業務型では、20の業務の中から対象業務を労使協定で定めます。労使協定は労働基準監督署に届け出ます。

対象となる20業務は次のとおりです。

  1. 新商品・新技術の研究開発、人文科学・自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析・設計の業務
  3. 新聞・出版の記事の取材・編集、放送番組の制作のための取材・編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画等の制作のプロデューサー・ディレクターの業務
  6. 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(コピーライター)
  7. 事業運営で情報処理システムを活用するための問題点の把握、活用方法の考案・助言の業務(システムコンサルタント)
  8. 建築物内の照明器具、家具等の配置に関する考案、表現、助言の業務(インテリアコーディネーター)
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 有価証券市場の相場等の動向、有価証券の価値等の分析、評価、これに基づく投資に関する助言の業務(証券アナリスト)
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
  13. 銀行・証券会社における顧客の合併・買収に関する調査・分析、これに基づく考案・助言の業務(M&Aアドバイザー)。2024年4月施行で追加
  14. 公認会計士の業務
  15. 弁護士の業務
  16. 建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)の業務
  17. 不動産鑑定士の業務
  18. 弁理士の業務
  19. 税理士の業務
  20. 中小企業診断士の業務

「確かめよう労働条件」は、研究開発業務に従事する者を補助する助手、プログラマー等は、専門業務型裁量労働制の対象とはならないとしています。

企画業務型裁量労働制(企画・立案・調査・分析)

厚生労働省のパンフレットによると、企画業務型の対象業務は、次の四つの要件のすべてに当てはまる業務の中から、労使委員会の決議で具体的な範囲を決めます。

  • イ 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること
  • ロ 企画、立案、調査及び分析の業務であること
  • ハ 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
  • ニ 業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

同パンフレットは、ホワイトカラーの業務のすべてが対象になるわけではないとしています。対象労働者は、労働基準法38条の4により、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者です。

決議は労使委員会の委員の5分の4以上の多数で行い、労働基準監督署に届け出ます。リーフレットは、この決議は届け出なければ効力を有しないとしています。

本人の同意と同意の撤回(2024年4月から)

2024年4月1日から、専門業務型の適用には労働者本人の同意が必要になりました。パンフレットは、同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないことと、同意の撤回の手続を労使協定で定めるよう求めています。使用者は、同意の撤回後の配置と処遇について、撤回を理由として不利益な取扱いをしてはなりません。

企画業務型では本人の同意は以前から必要で、同意の撤回の手続が2024年4月1日からの事項です。「確かめよう労働条件」は、就業規則による包括的な同意は「個別の同意」に当たらないとしています。

フレックスタイム制・みなし残業・管理監督者との違い

フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制では、清算期間の総労働時間の範囲で労働者が始業と終業の時刻を決め、労働時間は実際に働いた時間で数えます。裁量労働制では、みなし労働時間を働いたものとみなします。制度の内容と求人の件数はフレックスタイム制とはにあります。

みなし残業(固定残業代)との違い

固定残業代(みなし残業)は、一定時間分の時間外労働に対する手当をあらかじめ定めて払う賃金の仕組みです。みなし労働時間は、労働基準法38条の3・38条の4により働いたものとみなす労働時間です。どちらも「みなし」の語を使いますが、別の仕組みです。

裁量労働制が適用されると書いた求人677件(51社)のうち、固定残業代やみなし残業などの記載もある求人は230件(25社)です(2026年10月時点)。金額と時間数の分布は固定残業代とはで集計しています。

管理監督者・高度プロフェッショナル制度との違い

管理監督者は別の仕組みで、その判断基準と深夜の割増賃金は年俸制の残業代にあります。

高度プロフェッショナル制度は、厚生労働省のリーフレットによると、1年間当たりの賃金の額が少なくとも1,075万円以上の労働者を対象に、労使委員会の決議と労働者本人の同意を前提として、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。裁量労働制では、深夜と休日の割増賃金の規定は適用されます。

裁量労働制が適用されると書いた求人は3.6%(職種別・年収別)

各社の採用ページに掲載された日本語の求人18,770件(774社)のうち、裁量労働制が適用されると書いた求人は3.6%(677件・51社)です(2026年10月時点)。

企業の割合は、厚生労働省の令和7年就労条件総合調査にあります。令和7年1月1日現在、常用労働者30人以上の民営企業3,820社の回答で、専門業務型を採用している企業は2.1%、企画業務型は1.0%です。1,000人以上の企業では8.7%と5.0%です。

【職種別】ITエンジニアの求人では7.2%

職種求人数裁量労働制が適用されると書いた求人
ITエンジニア5,127件7.2%(369件・37社)
マーケティング・広報770件4.5%(35件・12社)
営業3,001件2.6%(79件・19社)

職種は求人の分類で、法令の対象業務とは別の区分です。日本語の求人18,770件(774社)。2026年10月時点。

ITエンジニアの職種の内訳と年収はITエンジニアのキャリアパスにあります。

【年収別】求人に書かれた年収の下限で分けた割合

年収の下限求人数裁量労働制が適用されると書いた求人
500万円未満3,757件1.5%(58件・16社)
500〜699万円4,462件4.0%(179件・25社)
1,000〜1,499万円679件8.1%(55件・10社)

700〜999万円は1社の求人が4割を超えるため示していません。日本語の求人18,770件(774社)。2026年10月時点。

年収の幅の書き方は求人の年収レンジで集計しています。

長時間労働になりやすいのか(厚生労働省の裁量労働制実態調査)

適用されている労働者の労働時間は、厚生労働省の実態調査にあります。この調査は令和元年10月31日現在の状況を調べ、令和3年6月25日に公表されました。適用労働者47,390人と非適用労働者40,714人の有効回答があります。

適用労働者の1日の平均労働時間数は9時間0分、非適用労働者は8時間39分です。1週間では45時間18分と43時間2分です。1時間単位で回答した調査票のみを集計した値です。

深夜の時間帯(午後10時から午前5時)に仕事をすることが「よくある」と答えた適用労働者は9.4%、「ときどきある」は24.9%です。非適用労働者では3.1%と14.7%です。

適用されていることへの満足度は、「満足している」が41.8%、「やや満足している」が38.6%です(結果の概要)。専門型の適用労働者では「今のままでよい」が33.0%、「制度を見直すべき」が28.3%で、見直すべきとした労働者のうち51.7%は「労働者の健康やワークライフバランスにより配慮されるようにすべき」を挙げています。企画型では「制度を見直すべき」が26.0%で、そのうち46.6%は「対象労働者の範囲を見直すべき」を挙げています。

労使協定または決議には、適用労働者の労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を定めます。厚生労働省のパンフレットが挙げる例には、終業から始業までの一定時間以上の休息時間の確保(勤務間インターバル)、深夜業の回数を1か月で一定回数以内とすること、医師による面接指導があります。「確かめよう労働条件」は、1週間当たりの労働時間のうち40時間を超える時間が月80時間を超えた労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければならず、使用者は安全配慮義務を免れないとしています。

求人に書かれた残業時間は残業時間の記載のある求人で集計しています。

求人で分かるのは、裁量労働制が適用されることと、書かれていればみなし労働時間までです。各求人ページには、企業が採用ページに書いた募集要項の本文を掲載しています。勤務制度の欄がある求人では、「裁量労働制」の表示と、その根拠となる記載の引用を確認できます。みなし労働時間と深夜・休日の割増賃金の扱いは、書かれていれば募集要項の本文にあります。

裁量労働制で求人を絞り込む機能はありません。IT・ソフトウェア業界の求人の一覧は次のとおりで、裁量労働制が適用されると書かれていない求人も含みます。応募は各社のサイトで行います。

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