固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金です。求人票では、みなし残業代、定額残業代とも書かれます。
固定残業代の金額と月給の両方が読める求人2,082件(162社)では、月給に占める固定残業代の割合は1社ごとの中央値で23.8%、金額は月79,484円です(2026年10月時点)。各社の採用ページに掲載された日本語の求人20,977件(829社)の記載を数えた集計です。時間数も読める求人1,598件(128社)では、割合は時間数ごとにほぼ一定で、45時間分は26.0%、30時間分は19.0%です。時間数の分布は求人票の固定残業代の時間数で集計しています。
固定残業代とは(みなし残業代・定額残業代)
厚生労働省はリーフレットで、固定残業代を、名称にかかわらず一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金と説明しています。同省のQ&Aは、「定額残業手当」や「みなし残業代」などと呼ばれることもあるとしています。
固定残業代は賃金の一部です。求人票の「◯時間分」は、その賃金が何時間分の割増賃金にあたるかを示します。金額は、1時間あたりの額と時間数から計算されます。
固定残業代は残業しなくてももらえる?
厚生労働省のリーフレットの記載例では、固定残業代は時間外労働の有無にかかわらず支給すると書きます。記載例の文は「時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給」です。
各社の扱いは、募集要項にこの形の記載があるかで確認できます。
固定残業代の時間数を超えた分(超過分)
厚生労働省のQ&Aは、固定残業代の金額が労働基準法37条などの方法で計算した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払う必要があると説明しています。労働基準法37条と政令は、時間外労働に通常の賃金の2割5分以上、月60時間を超えた分に5割以上の割増賃金を支払うよう定めています。
リーフレットの記載例にも、「○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」という項目があります。
「固定残業代なし」と書かれた求人では、割増賃金は実際の残業時間で計算されます。
みなし労働時間制との違い
みなし労働時間制は、労働時間の数え方を定める制度です。固定残業代は、賃金の払い方です。
みなし残業代は固定残業代の別の呼び方で、みなし労働時間制とは別のものです。
厚生労働省の労働時間・休日のページは、みなし労働時間制として「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の三つを挙げています。事業場外で働き、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間働いたものとみなします(労働基準法38条の2)。専門業務型と企画業務型の裁量労働制では、定めた時間働いたものとみなします(38条の3、38条の4)。
【時間数別】固定残業代が月給に占める割合
固定残業代が月給に占める割合は、時間数でほぼ決まります。固定残業代の金額・月給・時間数の三つが読める求人1,598件(128社)では、月給に占める割合の企業の中央値は、45時間分で26.0%、40時間分で23.8%、30時間分で19.0%、20時間分で13.5%です(2026年10月時点)。
固定残業代の金額・月給・時間数の三つが読める求人1,598件・128社のうち4つの時間数。計算値は1.25×時間数÷(160+1.25×時間数)。時間数の分布ではありません。2026年10月時点。
45時間分の求人(591件・47社)では、月給に占める割合の企業の中間の半分は25.7〜26.0%です。同じ45時間分でも、固定残業代の企業ごとの中央値は66,555円から325,145円まであります。
金額は月給で決まります。
求人票に金額がなく、月給と時間数だけが書かれている場合は、月給に表の割合を掛けると固定残業代の目安が出ます。金額も書かれている場合は、「この求人の固定残業代は月給の◯%、同じ時間数の企業の中央値は◯%」という位置が分かります。
時間数ごとの求人の件数と、固定残業代45時間の求人に記載された残業時間は、別の集計で扱っています。
固定残業代の計算方法(1時間あたりの額と計算例)
固定残業代は、(固定残業代を除いた額÷1か月の所定労働時間)×1.25×時間数で計算されます。基本給と固定残業代の合計が月給と同額で、時間数も読める求人677件(66社)では、各求人の三つの数字から逆算した1か月の所定労働時間は、企業の中央値で160.0時間(企業の中間の半分は159.8〜161.9時間)です(2026年10月時点)。この677件の89.2%は、150〜175時間の間にあります。
月によって定められた賃金の1時間あたりの額は、その金額を1か月の所定労働時間数(月によって異なる場合は1年間の1か月平均)で割って出します(労働基準法施行規則19条)。式の1.25は、通常の賃金に2割5分の割増を加えた倍率です。2割5分は、労働基準法37条と政令が時間外労働について定める率の最低限度です。
時間数別の表にある割合の企業の中央値は、1か月の所定労働時間を160時間としてこの式から計算した割合と、4つの時間数すべてで小数第1位まで同じです。
月給391,300円で固定残業代が40時間分なら、固定残業代は93,167円です。
月給は企業の中央値、所定労働時間は求人の三つの数字から逆算した中央値160時間(677件・66社)、時間数は40時間として計算した例。特定の求人の数字ではありません。2026年10月時点。
式の基礎は固定残業代を除いた額です。月給の全体を160で割って計算すると、固定残業代は式の値より高く出ます。
月給×1.25×時間数÷(160+1.25×時間数)で、金額の書かれていない求人でも固定残業代の目安が出ます。1か月の所定労働時間は企業ごとに異なります。
1か月の所定労働時間は、年間休日の日数から計算できます。年間休日が125日で1日8時間なら、(365−125)×8÷12=160時間です。年間休日の集計は求人票に書かれた休日の日数にあります。
固定残業代を時間数で割ると、固定残業代の1時間あたりの額が出ます。固定残業代の金額・月給・時間数の三つが読める求人1,598件(128社)では、企業の中央値は2,453円、企業の中間の半分は1,863〜3,010円です。求人票の金額を時間数で割った額は、この幅の中での位置として読めます。
求人票に式を書いている求人は5件(2社)です。記載は「固定残業代:基本給÷160(所定労働時間)×1.25×固定時間」と「固定残業代の計算方法:基本給/150H×1.25×20H」です。
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、割増賃金の計算の基礎に含めません(労働基準法37条5項、同施行規則21条)。月給にこれらの手当を含む求人では、固定残業代を除いた額は、企業が計算の基礎にした額と異なる場合があります。
【月給別】固定残業代の金額と固定残業代を除いた額
固定残業代の金額と月給の両方が読める求人2,082件(162社)では、固定残業代の企業の中央値は月79,484円で、企業の中間の半分は60,024〜119,050円です(2026年10月時点)。月給の企業の中央値は391,300円(311,786〜500,000円)、固定残業代を除いた額は308,290円(241,775〜377,500円)です。
三つの中央値は別々に求めた値です。月給の中央値から固定残業代の中央値を引いても、固定残業代を除いた額の中央値にはなりません。
同じ2,082件(162社)の求人の中央値は、固定残業代が94,500円、月給が416,667円、固定残業代を除いた額が317,461円、月給に占める割合が24.0%です。
金額は月給の帯ごとに変わります。企業の中央値は、月給30万円未満(398件・66社)の51,258円から70万円以上(162件・32社)の204,881円まで、帯が上がるごとに高くなります。
金額と月給の両方が読める求人2,082件・162社。幅のある金額は下限を、組になる月給の下限と合わせて集計。2026年10月時点。
2,082件のうち、金額に幅のある求人は1,168件、「◯円〜」の形で下限だけを書いた求人は441件、金額が一つの求人は473件です。時間数が同じなら、金額は月給に合わせて変わります。
この2,082件のうち2,064件(157社)は日系企業、外資系企業は11件(4社)です(外資系企業の定義と社数)。業界別で件数が最大なのはIT・ソフトウェアの501件(43社)です。この集計の金額は、金額を求人票に書いた企業の数字で、ほとんどが日系企業です。
【年収別】年収に固定残業代を含む求人の金額
固定残業代の金額と年収の下限の両方が読める求人2,191件(175社)では、固定残業代の12か月分が年収の下限に占める割合の企業の中央値は20.7%、金額の企業の中央値は月80,000円です(2026年10月時点)。割合は、固定残業代×12÷年収の下限で計算しています。
年収の下限が700万円未満の求人(1,579件・160社)では、固定残業代の企業の中央値は月78,000円です。1,000万円以上の求人(172件・36社)では月201,083円です。年収の下限に占める割合は、どの帯でも20.4%から22.1%の間にあります。
金額と年収の下限の両方が読める求人2,191件・175社。800万円以上と1,000万円以上は700万円以上の内数。年収は賞与を含む場合あり。2026年10月時点。
年収の下限が700万円以上の求人612件(86社)では、固定残業代の企業の中央値は月134,958円です。12か月分を計算すると、134,958円×12=1,619,496円です。
年収に賞与を含む求人では、年収は月給の12か月分を上回ります。同じ求人でも、固定残業代が年収に占める割合は、月給に占める割合より小さくなります。
年収の下限と上限の幅は、求人票の年収レンジで集計しています。
固定残業代の求人票の見方(三つの記載項目)
固定残業代の記載は、固定残業代を除いた額、時間数と金額、時間数を超えた分の扱いの三つの項目に分けて読めます。
厚生労働省のリーフレットの記載例の形に、計算例の数字(2026年10月時点の企業の中央値から計算)を入れると、次のようになります。
① 基本給(298,133円)(②の手当を除く額)
② 固定残業手当(時間外労働の有無にかかわらず、40時間分の時間外手当として93,167円を支給)
③ 40時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
①と②の合計が月給で、この例では391,300円です。
厚生労働省は、若者雇用促進法に基づく指針で、青少年が応募する可能性のある募集又は求人について、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代の時間数と金額などの計算方法、その時間を超えた分の割増賃金を追加で支払うことの明示を求めています(同リーフレット)。
職業安定法5条の4は、求人や労働者の募集の情報について、虚偽の表示と誤解を生じさせる表示を禁じています。厚生労働省のQ&Aは、実際よりも高額であるかのような表示の例として、固定残業代の時間数などを明示せずに基本給に含めて表示することを挙げています。
各求人ページには、企業が採用ページに書いた募集要項の本文を掲載しています。給与の欄がある求人では、固定残業代の時間数、金額、超過分の扱いをその記載で確認できます。
時間数が分かれば月給に占める割合の目安が分かり、金額が分かれば1時間あたりの額が出ます。
固定残業代の有無や金額で求人を絞り込む機能はありません。
記載されている年収が800万円以上の求人の一覧があります。固定残業代の記載は各社の募集要項に基づきます。応募は各社のサイトで行います。
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